【サークル紹介】理科教育サークル SCOPE ——「本気で遊ぶ」が最高の学びになる。理科大生が仕掛ける、子どもたちとの熱狂の理科実験
2024年4月に本格始動し、設立からわずか1年余りで部員数約50名という大所帯へと急成長を遂げた団体がある。東京理科大学「理科教育サークル SCOPE」だ。
理科実験の面白さを子どもたちに伝える出前授業から、独自の教材開発まで幅広く活動する彼ら。しかし、その根底には単なるボランティアの枠に収まらない、教職課程を履修する学生たちの切実な思いと、恩師の技術を受け継ごうとする熱意、そして理科大生ならではの知的な遊び心が隠されていた。
設立の原点:教職課程を支える「互助コミュニティ」と恩師の背中
SCOPE 設立の背景には、代表(設立時)の強い危機感があった。「教職課程は課題も多く、介護等体験や教育実習など特有の行事もあります。それなのに、何をすればいいか分からない時、相談できる先輩もいない。モチベーションを保てずにドロップアウトしてしまう人を減らしたかったんです」。
SCOPEは、教職課程を乗り切るための互助会としての側面を強く持っている。指導案の書き方や教育実習のリアルな体験談など、先輩から直接アドバイスをもらえる安心のサポート体制が、教職志望の学生たちを力強く支えているのだ。 そしてもう一つの設立理由は、彼らの顧問を務めていた(2025年度まで)関陽児先生の存在だ。関先生は、身近で入手しやすい素材を組み合わせて実験道具を作る達人。しかし、先生の定年退職が迫る中、「この素晴らしい実験技術や哲学を属人的なものにせず、学生団体という無形資産として後世に残したい」という思いが、サークル立ち上げの強力な原動力となった。
現場での圧倒的経験値
SCOPEの活動の主軸は、地域の小中学校やイベント会場での出前授業だ。ただ実験を行うだけでなく、相手方との企画交渉や資料作成といったディレクション業務まで学生自身が行うというから驚きだ。
大学の授業でも模擬授業は行うが、相手は「すでに内容を分かっている大学生」になってしまう。しかし、実際の教育現場には全く分からない子どもたちがいる。
教育実習に行く前に、本物の現場で子どもたちの予測不可能な反応を浴びながら、どうすれば伝わるのか試行錯誤する。時には不足の事態に備えて何本ものバイパス(代替案)を用意しておく。この生きた経験が、彼らに圧倒的な「余裕」と「実践力」をもたらしているのだ。
大人までもが熱狂する!SCOPEの「本気の遊び」
インタビュー中、メンバーの顔が最も輝いたのは、実際の実験エピソードを語る時だった。彼らが手掛ける実験は、どれも学生自身が本気で面白がって企画したものばかりだ。
- 巨大パラボラ実験:数学(二次関数)と物理の知識を融合させた企画。直径1メートルの巨大なパラボラをダンボールで自作し、小学生たちと一緒に表面を完成させる。焦点を計算し、離れた場所からひそひそ話をするとパラボラ越しに声がハッキリと聞こえる。「声が聞こえなくなるまで校舎の端(反対側)まで走っていって、聞こえた瞬間に感動して駆け戻ってきた」というエピソードからは、現場の興奮が手に取るように伝わってくる。
- 備長炭電池:備長炭や塩水といった身近な素材だけで電池を作り、LEDを光らせる実験。電池が1個だと光らないけれど、2個、3個と繋ぐと明るくなる。身近なものがエネルギーを生み出す事実に、小学生たちが「えっ!」と声を上げて驚く姿がメンバーのやりがいになっている。
- 掴める水:理大祭で大反響を呼んだ企画。化学反応を利用して、普段は掴めない水を掴めるようにする。身近な物質の不思議な変化に、低学年の子どもたちだけでなく保護者からも「どういう原理なんですか?」と質問が飛び交うほどの盛り上がりを見せた。
- 偏光板の不思議な世界:ディスプレイについている偏光板を剥がし、ディスプレイの見え方の変化や偏光板自体の特性を見る実験。メガネのようにして見ると、角度によって見え方が変わったり、色が反転したりする。子どもたちだけでなく、同伴した大人たちも一緒に夢中になってしまうという、SCOPE屈指の鉄板ネタだ。
大学生特有の苦悩。数式や専門用語を使わずに「概念」を伝える
彼らが企画立案において最も苦労し、同時に面白さを感じているのが「対象に合わせた難易度と言葉の調整」だ。
「普段、大学のレポートや教授に向けて硬い文章を書いているせいで、小学生向けの講座の文章を書こうとすると、どうしても難しくなってしまうんです」とメンバーは苦笑いする。
例えばパラボラの実験でも、小学生には光や音が集まるねと感覚的に伝え、中高生相手であれば放物線や数学的アプローチを交えるよう準備しておく。「古代エジプト人はルート記号を知らなくても、図形的な解釈で概念を理解していました。子どもたちが持ち得ている言葉の中で、どうやって私たちが伝えたい概念を表現するか。数式を使わずに表現するのは、僕たち自身にとっても最高のトレーニングになるんです」。 また、企画を成功させる極意は「まず、自分たちが楽しむこと」だという。子どもは敏感で、教える側が焦っていたり不安そうにしていたりするとそれが伝染してしまう。だからこそ、理科大生自身が本気で遊ぶことが、最高の授業を生み出す秘訣なのだ。
教職だけじゃない。多様な個性が集う場所
SCOPEの魅力は、教職志望の学生だけにとどまらない。 外部との交渉、企画の立案、Webサイトの制作、機材の調達など、サークル運営には多岐にわたるスキルが求められる。 そのため、教職をとっていないメンバーもそれぞれの得意を活かして活躍しているのだ。「SCOPEは、本気で遊べる教育の場所。自分が楽しいと思った実験を、周りが助けて形にしてくれる。教職じゃなくても、実験が好き、話すのが好きな人にとって最高の場です」とメンバーは語る。
新入生・在学生の皆様へ
高校生でもなく、社会人でもない大学生という、特異で自由な立場。その輪の広さを最大限に利用して、社会と繋がり、リアルな経験を積むことができるのがSCOPEだ。 理科が好き、子どもが好き、実験が好き、あるいは何かに熱中したい__。SCOPEは、そんな理科大生の熱い思いを受け入れ、形にしてくれる、最高に知的な遊び場である。新しい学部の学生も、他キャンパスの学生も関係ない。少しでも心が動いたなら、ぜひ彼らの扉を叩いてみてほしい。
SCOPEの活動をもっと知りたい方はこちら
・SCOPE 公式ウェブサイト:https://tus-scope.tokyo
・公式Instagram:@tus_scope
・公式X(旧Twitter):@tus_SCOPE
(取材・文:東京理科大学新聞会 望月)




