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【連載】【理科大生に贈る1冊】第9回 「52ヘルツのクジラたち」

 大学生になり本を読む機会が減っていると感じています。そこで普段本を読まない新聞会企画班のメンバーが読書をして理科大生に本を紹介しようという企画です。人それぞれの違った本への感じ方を共有できたらいいなと思います。

 町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」は、2021年本屋大賞を受賞した作品です。私は祖母からこの本を勧められました。読み始めると、この作品特有の静かで深い世界に一気に引き込まれ、私もこの本が大好きになりました。どの年代の人の心にも優しく響く作品です。

あらすじ

 大分県の静かな海辺の町に一人引っ越してきた三島貴瑚は、ある雨の日に一人の少年と出会います。言葉は発しないものの確かに貴瑚に助けを求めた少年を、貴瑚は放っておくことができず、少年が安心できるような場所を見つけるまで共に過ごすことを決意します。少年と関わっていくなかで、貴瑚は懺悔と後悔を幾度となく繰り返した、未だ癒えない自らの過去と向き合います。偶然出会った二人が新たに紡ぐ魂の物語は、力強く、私たちに勇気を与えてくれます。二人がどのような結末を迎えるのか、そして貴瑚がどのように過去と向き合い、生きるのかに注目してほしいです。

52ヘルツのクジラたちを読んで

 私たち人間は、人によってその大きさや深さは違うけれど、孤独を背負いながら生きる生き物だと思います。この作品は、私たちのその弱く、つらい部分を優しく受け止め、救いをくれる作品です。コロナ禍で外出を控えねばならず、人とのつながりができにくく、孤独を感じる瞬間が多くなったように感じる今、みなさんに是非おすすめしたい作品です。深い海の中で魂を叫びながらさまよう52ヘルツのクジラたちを思い浮かべながら、読んでほしいなと思います。


新聞会企画班 杉山莉央