大学生になり本を読む機会が減っていると感じています。そこで普段本を読まない新聞会企画班のメンバーが読書をして理科大生に本を紹介しようという企画です。人それぞれの違った本への感じ方を共有できたらいいなと思います。
第8回目の本は、角川文庫より「氷菓」です。米澤穂信著の「氷菓」は2012年にアニメ化、2017年に実写映画化しており人気を博しました。しかし本で読んだことがあるという方は少ないのではないでしょうか。今回はそんな小説「氷菓」を紹介したいと思います。
あらすじ
何事にも積極的に関わろうとしない「省エネ主義」を信条とする神山高校1年生の折木奉太郎は、姉からの勧めで部員0人だという古典部に入部します。しかし古典部には同じ1年生の千反田えるも“一身上の都合”で入部していました。奉太郎の親友の福部里志も古典部に加わり、活動を開始します。そして、えるの強烈な好奇心を発端とし、奉太郎は日常の中の様々な謎を解き明かしていくことになります。
本作は「古典部シリーズ」の第一作であり、高校入学の4月から夏休みに入る7月末までの出来事を描いています。
引き込まれる世界観
物語は、えるが疑問を持った日常のちょっとした謎を奉太郎が解き明かしていくというものですが、どれもなぜそのような状況が出来上がったのかがしっかり説明されており納得できます。序盤はテンポよく読むことができ、どんどん古典部の世界に引き込まれていきます。
物語中盤で、幼少期に元古典部部長の伯父から聞いたはずなのに忘れてしまっていた古典部にまつわる話をどうしても思い出したいと、えるが奉太郎に助けを求めます。ここから物語の性質が大きく変わっていきます。古典部の文集「氷菓」がその手がかりだと知った奉太郎達はさっそく調べ始めますが、実はこの「氷菓」には、過去に起こったとある出来事の謎が隠されていました。この謎がとてもよく作りこまれているのです。「氷菓」の意味が分かった時、衝撃で鳥肌が立ちました。もちろん、結末をここに書くわけにはいきませんから、続きはぜひ皆さんに読んで確認していただきたいです。
作者について
著者米澤穂信は、推理小説の中でも青春ミステリと呼ばれるジャンルを書き、日常の謎を扱った作品を主に発表しています。その端的な文体と巧みなキャラクター設定により、特に若い世代から支持を得ています。米澤は自著について「これらの作品群に訂通するテーマは全能感であり、思春期における全能感の揺れ動き、変化していく過程を書いてきた」と述べています。
最後に
冒頭にも書きましたが、アニメ・映画を知っていても小説を読んだという人は少ないと思います。結末を知っていたとしても、小説を読んでじっくりと古典部の世界を掘り下げ、映像作品とはまた違った面白さを見つけてほしいと思います。
もちろん、知らないという方にも自信を持ってお勧めできる本です。
どんな方でも楽しめる本なのでぜひ手に取ってみてほしいと思います。
企画班 中野悠斗
本の紹介
「氷菓」
著者:米澤穂信
発行元:角川文庫