「貧困」と聞くと何を思い浮かべるだろうか。 必要最低限のものや食料が入手できず困っている状況や海外を連想するのではないだろうか。しかし「貧困」といわれる状況はそれよりも多く、日本でも深刻な問題であることを知っているだろうか。特に子供の貧困が問題となっている。
貧困とは何か
「貧困」には2種類あり、絶対的貧困と相対的貧困が存在する。前者は人間として最低限の生活水準が維持できない状況をいう。一方で後者は世帯の等価可処分所得(可処分所得*1を世帯人数の平方根で割った値)が国全体の中央値の半分未満である状態と経済協力開発機構(OECD)*2によって定義されている。つまり国民の大多数にとって普通とされる生活ができない状況だ。基本的に前者は後者に含まれ、日本における貧困はほとんどの場合後者を指す。相対的貧困率とはこのような状況にある国民が人口全体に占める割合であり、所得格差の指標の一つだ。
日本における貧困の状況
2019年の厚生労働省の報告*3によると、日本の相対的貧困率は15.7%、そして18歳未満の子供の貧困率は14.0%だ。言い換えると、約7人に1人の子供が貧困状態にある。特に一人親世帯の貧困率は48.3%と高い。これらの値は先進国のみならず、OECD加盟国のなかでも最悪水準だ。これは大きな問題であるにも関わらず、その認知度はいまだ高くない。
貧困の連鎖
貧困世帯の子供は他と比べ同じ生活体験や教育の機会を得られないことが多い。例えば就学以前は十分な遊び相手や話し相手がいないことで、成長すると社会との関わりや学習に困難を覚える子もいる。また塾や習い事に通えなかったり、大学に進学できなかったりする。このように貧困は機会の不平等と教育格差を生み、将来的に子供の世代で再び貧困を生む可能性が高い。
新型コロナウイルスの影響
コロナ禍は低所得層を直撃した。2020年4月にNPOが母子家庭に対して行ったアンケート*4では、休業などで約6割の世帯が収入減、11%は収入がなくなると答えている。
対策
この問題は政府や自治体による所得再分配の適切な法整備なしに解決できない。しかし今も生活に困っている人が大勢おり、その支援をすることは誰にでもできる。1つの方法は支援団体に寄付することであり、もう1つはボランティア活動をすることだ。
子供の貧困対策に取り組むNPOは多くあり、様々な規模で特色ある活動をしている。
団体紹介
例えば幅広い分野で50年以上活動している日本財団は、家庭に様々な課題を持つ子供が通える「第三の居場所」を提供している。子供たちの生活面と学習面での自立をサポートするのが目的だ。
また10代の意欲と創造性を高める目的で、2001年から成長と学びのための居場所を提供し続けているNPOカタリバがあり、多くの受賞歴とメディア掲載歴を持つ。
そして母子家庭の親子を支援する団体に、「しんぐるまざーず・ふぉーらむ」があり、就労支援プログラム、募金の設立、有益な情報の発信など様々な形の支援を行っている。
これら以外にも多くの支援団体があるので、ぜひ自分で検索をかけ、共感できるものを見つけてもらいたい。
終わりに
今、日本で子供の貧困が深刻な問題であり、多くの人の意識と支援が解決に大きく影響する。できることを通してこの問題と向き合ってみるのはどうだろうか。
リンク:
日本財団 子供の貧困対策:
https://nf-kifu-kidssupport.jp/projects/ending_child_poverty/
NPOカタリバ:
https://www.katariba.or.jp/about/
しんぐるまざーず・ふぉーらむ:
*1 総所得額から直接税や社会保険料を除いた金額で、いわゆる手取り収入のことである。
*2 世界の経済発展に貢献するために経済・社会の幅広い分野で活動している国際機関。37ヶ国が加盟しており(2021年2月現在)、日本は1964年以降加盟している。
*3 厚生労働省 2019年 国民生活基礎調査の概況 Ⅱ各種世帯の所得等の状況:
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf
*4 ひとり親家庭への新型コロナウィルス(COVID-19)の影響に関する調査:
https://www.single-mama.com/wp/wp-content/uploads/2020/05/0519_SMF_covid19_enq.pdf