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【連載】【理科大生に贈る1冊】第5回 「新世界より」

大学生になり本を読む機会が減っていると感じています。そこで普段本を読まない新聞会企画班のメンバーが読書をして理科大生に本を紹介しようという企画です。人それぞれの違った本への感じ方を共有できたらいいなと思います。

「理科大生に贈る1冊」第5回目に紹介する本は「新世界より」という貴志祐介によるSF小説です。1000年後の日本が舞台となっているのですが、世界設定が詳細で読んでいくうちに引き込まれていくような作品になっています。 

・新世界より 

小説は1000年後の日本で主人公の渡辺早季が残した手記として書かれています。早季が生まれた神栖66町はしめ縄によって外界と隔てられていて、呪力とよばれる超能力を持った人々によって平和な社会が築かれていました。物語は早季たちがその隠された歴史の一部に触れることで始まります。全体としてはダークファンタジー的な内容になっていて、緊迫した冒険や危険と隣り合わせの場面の数々はまるでその場にいるような臨場感がありました。 

・作者が描く独自の世界観 

この作品の魅力は作者が描いた独自の世界観です。1000年後の世界では人々は超能力を使えるにも関わらず、一昔前の自然豊かな田舎のような暮らしをしています。例えば、町では貨幣というものが存在しないし、電力は公民館から流れる放送以外に使いません。また作中ではミノシロやバケネズミといったオリジナルの生物も多く存在しています。それらの世界設定は読んでいくうちに明らかになっていくのですが、全体としてとても深いので人間の業についても考えさせられるものになっています。

・新世界よりを読んで 

息を呑むような展開の連続と登場人物一人ひとりの命が関わる決断はとても印象的でした。もし自分が主人公の立場だったら、もしその町で暮らしている人の立場だったら、と考えさせられる内容でした。この作品は世界観が特徴的なので、作中の世界に入り込んだような気持ちで読んでみて欲しいです。

新聞会企画班 石高永進 



  • 本の紹介 
  • 「新世界より」 
  • 著者:貴志祐介 
  • 出版社:株式会社 講談社