周期表を未来の世代へ
5日、IYPT(国際周期表年)2019の閉会式(以下:閉会式)が東京プリンスホテル(東京都港区芝公園)で開かれた。本年は、ロシアの化学者メンデレーエフが元素の周期律を発見してから150周年の節目の年となる。それを記念して、フランスでの開会式を初め、メンデレーエフの生まれ故郷であるロシアなど、1年を通して世界中の国々でイベントが開かれ、その最後を飾る閉会式が日本で行われた。
閉会式では、世界中の著名な科学者や各国教育機関の代表者が集まり、様々な講演や発表、展示などが行われていた。「Periodic Table for the next generation (Ⅱ)」というセッションでは、日本の中学生、高校生、大学生を対象としたエッセイコンテストの受賞チームの発表や現役の研究者や小学生、中学生、高校生が周期表についての意見を発表していた。
特に10歳のicht J. Nagamoriくんが、さながらTEDトークのようなスピーチを披露し、会場全体が盛りあがった。
展示ブースでは、金属でできたしおりを電気分解によって腐食させることで文字を浮かび上がらせる体験ができたり、メンデレーエフが使用していた当時の実験室がVRで再現され、ヘッドセットとともに渡されるコントローラーを使うことで金属を液体に入れて反応をみる実験ができたりする。
また、タッチ操作で使える電子版の周期表があり、原子番号や質量数など基本的なものから第3イオン化エネルギーや発見された年などマニアックなものまであり、情報を選んで表示することができる。この周期表はネット上に公開されているのでぜひ確認してほしい。( https://periodic.artlebedev.ru/?gshl=ZsoT)
また、独自の発想で改良を加え発表された周期表を3つ紹介する。
1つ目は、元素が書かれた立方体を「族」ごとに棒で串刺しにして、各立方体が独立して縦軸回転する「立体くるくる元素周期表」だ。製作者は、平面の周期表では情報量が足りないと感じ、立方体の側面にそれぞれ元素記号、元素につての情報などが書かれている。
2つ目は、それぞれの三角旗の片面に元素記号を裏面には、その読み方が書かれている「元素周旗表」だ。周期表というよりはパーティーなどで使える飾りの要素が強い。
最後は、元素を円筒の周りに、らせん状に並べた「エレメンタッチ」だ。従来の周期表だと似た性質を持っているのに離れた位置になっている元素があった。それらをらせん状に並べることで解決した。すべての元素が円筒に沿うわけではないが、内側の円筒にはs・pブロック元素、真ん中の輪にはdブロック元素、そして外側の輪にはfブロック元素が並ぶようになっている。
また、驚くべきことに「立体くるくる周期表」は中学生が、「元素周旗表」は高校生が考えたものだ。この若い世代の柔軟な発想が科学を発展させるのではないだろうか。今後の周期表や科学の発展に期待したい。