建築の日本展

建築の日本展 2018/7/10

今年の425日から六本木ヒルズ森タワー53階(東京都港区)にある森美術館にて、開業15周年を記念し『建築の日本展~その遺伝子のもたらすもの~』が開催されている。本展では、日本の建築をsection1からsection9までの9つのブースに分けられている。近代建築ではあまり意識されていない、日本に根差す技法を日本建築の「遺伝子」として考察している。貴重な建築資料などが100プロジェクト、400点以上展示されており、日本建築の過去、現在および、未来を我々に示している。その中で特に日本古来の「遺伝子」が伝承されていることについて触れているsectionに焦点を当てたい。

過去から未来を垣間見る

 section1では日本の伝統的な建築技法である「木組み」を使った歴史的建造物の実例やそれを応用したアート作品などのほか、過去と未来の大型木造建造物や伝統工法を現代建築へ応用した実例などが展示されている。木組みとは釘を使用せず、建材である木材を加工し、木材同士をはめ込んだり重ね合わせたりすることで建材の接合部位に強度を持たせ、上部構造の重さを分散させる工法である。この木組みにはほかの建材では生み出せない硬さと柔軟さがあり、地震大国である我が国に適した工法であることがうかがえる。この技術を駆使して建てられたものの例として平等院鳳凰堂や、東大寺南大門が紹介されている。また、古代出雲大社本殿や厳島神社大鳥居のような過去に建てられた大型木造建造物はその形状や組み立て方が模倣され現代建築に取り入れられているようだ。計画案ではあるが「ティンバライズ200」という200mほどの高さを持つ木造超高層建築はいままで我々の祖先が建造してきたものの集大成となるかもしれない。ブースの終わりには2012年に竣工した東京スカイツリーが五重塔と同じ建築技法を用いていることが触れられている。どちらも心柱がそれを囲む構造から独立しており、揺れに対して高い耐久性を誇るそうだ。

 

過去に耳を傾ける

 続くsection2,3では前述した伝統工法をどのように伝え、維持してきたかや、伝承される工法によって外見や機能も「遺伝」している様子が展示されている。Section2には伊勢神宮の式年遷宮が紹介されている。式年遷宮は20年毎に執り行われ、古来の様式を維持し、材を一新することで、目に見えない組み立て方と目に見える建物本体を後世に伝える仕組みとして機能する。具体的には、前回の式年遷宮で建てられたものを参考にしながら、その隣に予め用意されている土地で同じものを建立する方法を採っており、先人の知恵と目に見えないものを伝えることへの執念が感じられる。このように先人が技術と現物を後世に伝えてきたことで日本独自の建築様式というものは現代においても同じ祖先の面影をとどめることができているようだ。そこでsection3では日本家屋の特徴ともいえる屋根について取り上げている。いわゆる入母屋形状の屋根は風穴が開けてあり、そこを通り抜ける外からの風によって室内に対流を生み出したり、圧力差換気が可能であったりするようだ。この技術は三分一博志(さんぶいち ひろし)氏によって香川県直島(なおしま)にある直島ホールに応用されており、このことはこの技術が現代建築の中に生きていることを示すといえるだろう。また、「SANAA(サナア)」という、妹島和世(せじま かずよ)氏や西沢立衛(にしざわ りゅうえ)氏などによる建築家ユニットによって京都で実験的に建てられた集合住宅は京都市の条例や屋根へのこだわりから部屋ごとに勾配屋根を設け、周囲の建物との調和性を高める試みがなされている。さらにこの集合住宅では一世帯3部屋が与えられるが、隣人同士が必ず一つ部屋を公共スペースとして共有する形となっておりコミュニティの形成をも促進する効果が確認されているようだ。これは長屋をモチーフにしている点もあるらしく過去のアイデアを復活させたともいえる。

 

過去にふれる

 Section5では空間の日本的とらえ方について紹介されている。日本は寝殿造で代表されるように、壁で固定的に空間を仕切るという生活様式をとっていなかった。隣り合う者は互いを屏風などで仕切ってはいたもののそれは簡単に動かせるものであり、空間の境目は感じられるが、閉塞感は感じないように工夫されていた。つまり、隣り合う者の境目は可変的であったといえる。この寝殿造のような可変的間取りは近代の日本家屋にも障子や襖が取り外せる点などで伝えられている。隣り合う62間は隔てる襖を取り外せば12畳の大部屋に代わるという可変性を持っている。同時に襖開けて繋げた62室と襖を完全に取り外した12畳1間では畳数は同じであるが、異なる広さに感じることができる。同様の原理でsection5のブース内のブックラウンジにはブックラウンジと通路の境界の天井部分に、一段下げた吊り下げ天井を配置していた。これによってブックラウンジは限られた展示スペースを圧迫することなく、且つ通路と混同されない空間となっていた。これらの技法を用いつつ丹下健三(たんげ たんぞう)氏は香川県庁舎や自らの邸宅をコンクリートで日本的な外見や機能に仕上げ、大成をなした。

 

 本展は917日まで開催予定である。火曜日のみ17:00で閉館するがその他の曜日であれば10:00から22:00の間に会期中無休で営業中である。建築に興味があればもちろんのこと、専攻や分野に問わず万人が日本建築の美しさにふれ、何らかのインスピレーションを受けることは間違いないだろう。一度は行っておきたいスポットとしておすすめしたい。