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芸術鑑賞 Archive

米田知子展 ? 終わりは始まり

写真とはどんなものだろう?私は、写真とは一瞬を忠実に記録できるものだと思っていた。しかし、何年かまえにある一枚の写真に出会って、写真にはそれ以上の力があると思い知らされた。

その写真には広い真っ青なプールの端に二人の恋人が写っている。一見それだけの、なにげない一枚。しかし私には、実際には感じることのできないプールの湿度、聞こえるはずのない室内プールのくぐもった音、この時間を愛しく思う恋人たちの気持まで伝わってきた。

その写真家の名は米田知子。そして現在、彼女の写真展「終わりは始まり」が品川の原美術館で開催されている。彼女が写す世界は、前述したような日常のありきたりな風景を切り取ったものが多い。だがどの作品にも何らかの感情が浮き出ており、そこからは写っているもの以上の奥行きを感じ取ることができる。そしてこの写真展では、新作「パラレル・ライフ」から初期作品まで、米田知子の作品全体を見わたせる企画になっていた。

特に印象深かったのは、戦場の跡地の写真を集めた「シーン」の中のBEACHという一枚。これはノルマンディ上陸作戦の海岸の今の様子を取ったもの。スティーヴン・スピルバーグの映画「プライベート・ライアン」の舞台となった海岸なので、名前を聞いたことがある人やどんなことがあった場所なのか知っている人も多いかもしれない。写真に収められた風景はかつてそこが戦場で悲惨な出来事があった場所とは思えないくらい、穏やかで賑やかだ。しかし戦争の痕跡はほとんど残っていないものの、私の目には今の明るさのなかに過去の悲劇がだぶって見えた。

どの写真も必ず目に見えないものが映し出されている、目に見えるものを見ることがすべてではないという、米田知子の考え方が表れている写真展だった。一人で写真をじっくり味わうのもよし、友達と写真をみながらどんなものがみえるかお互い語り合うのもよし。見えないものを見るという、写真の新しい見方を感じに行ってみるのはどうだろう。

米田知子展-終わりは始まり
場所:原美術館(品川駅高輪口から徒歩15分)
期間:2008年9月12日(金)?11月30日(日)
詳細URL:http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html

  • Author: tuspress

フェルメール展?光の天才画家とデルフトの巨匠たち?

ヨハネス・フェルメールという画家を初めて意識したのは、現在も放送中の『美の巨人たち』という番組で、同氏の『牛乳を注ぐ女』を特集した回を観たときだ。一見写実的に描かれたその絵画に、緻密な計算に基づいた構成と、実際に写るものよりも見栄えを重視したいくつもの工夫が施されていると知ったとき、彼独特の光の描き方も手伝って、一瞬にして私の心を虜にした。それまでピカソやゴッホといった著名な画家の作品をみても「他人でも描けそう」なんて感想を抱いていた素人の私に、初めて「この人にしか描けない」と思わせた運命の画家だった。

そのフェルメールは残した作品の少なさでも有名であるが(現存するものでわずか30数点余り)、今回開催される展覧会ではそのうちの7点もが一同に出品されるという。場所は東京、上野。もちろん、行くか行かないかなどという迷いは微塵も生じない。選択肢は初めからひとつである。ある晴れた日の午後、私は上野に足を運んだ。

前述の『牛乳を注ぐ女』でもそうだが、フェルメールの作品には「左側に窓のある部屋と、その住人」という構図が非常に多い。それらの作品中の人々は机に向かって手紙を書いていたり、昼間から飲酒を楽しんでいたり、楽器を奏でていたりと、思い思いの日常を過ごしている。こうして文章にすると、さもありきたりな絵画に解釈されるであろう。だがフェルメールが描くことで、これらのごく一般的な日常の光景は深いドラマ性を帯びた作品に豹変する。

『手紙を書く婦人と召使い』の婦人が書く手紙は恋文だろうか。熱心な婦人の後ろで、召使いは何を思って窓の外を見ているのだろう。婦人の恋の行方を案じているのか。いやむしろ「早く書いてくれないか」などとでも思っているのかもしれない。『リュートを調弦する女』でも、女性の視線は窓の外にあるが、調弦の手を休めるほど何かめずらしい光景でも見えたのだろうか。窓から射し込むやさしい光と照らされる彼女の表情から、それが決して不快なことではないのが想像できる。それとは対照的な色の、くすんだ背景に描かれた地図には何か意図があるのだろうか…。

どの作品にも共通するのは、その作品の描く一瞬の「静けさ」だ。今回の展覧会では、フェルメールの故郷であるオランダのデルフトを代表する画家の作品も多数出品されており、そうした作品からもフェルメールのそれと同様の感覚を味わうことができる。どんなに繊細な描写の中にも、庶民の生活を題材とした作品ならではのやわらかさがあり、それらの中から私好みの作品もいくつか発見できた。だがやはり…と私は思う。「だがやはり、フェルメールは凄い」。

フェルメール展?光の天才画家とデルフトの巨匠たち?
場所:東京都美術館(上野公園内)
期間:2008年8月2日(土)?12月14日(日)
詳細URL:http://www.tbs.co.jp/vermeer/jpn/

  • Author: litoma

コトリンゴ pre release party

コトリンゴさん

8月の土曜日の昼下がり、下北沢mona recordsで小さなパーティーが始まりました。これは9月に発売されるコトリンゴの2ndアルバム「Sweet Nest」を記念して開かれたもの。

コトリンゴのことを知らない人のためにここで予備知識を。坂本龍一がナビゲーターを務めるラジオ番組『J-wave「RADIO SAKAMOTO」』で才能を見いだされたことをきっかけにデビューしたシンガーソングライターで、優しいほっとするような音楽を作っています。最近テレビ流れているミスタードーナツのCMの曲を聴いたことはありますか?「あのふわふわの曲!」と思った人、そうです!その曲を作った人です!他にも「月桂冠 月」などいくつかCMソングを手掛けているので、コトリンゴの曲を耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。

そんなコトリンゴのパーティーはゆったりとした雰囲気の中、白い壁のスクリーンに映し出されたアルバムの1曲「おいでよ」の絵本のPVから始まりました。「おいでよ、朝が来る前に…」という歌詞とともに流れる絵本の世界のような映像は、眠れない夜にふと寂しさを感じるとき、大丈夫だよと背中を押してくれるようなような、安心感や爽快感を与えてくれます。

絵本の世界に浸ったあと、コトリンゴプロデュースの「小鳥の実」デザートが、アルバム曲のダイジェストをBGMにふるまわれます。デザートは、ラズチョコ(ラズベリーとチョコレート)のアイスや焼きリンゴとシナモンのアイスに、小鳥の形のクッキーが乗っているアルバムにちなんだかわいいものでした。

コトリンゴさん作の「鳥のかご」

最後はmona recordsの店主ユキさんとの対談とアルバム収録曲からのライブ。対談ではアルバムの話の他に、出身地(キングコングの西野さんと同級生だったなど)や育てているゴーヤの話などで盛り上がりました。

コトリンゴ自身、「このパーティーはいつも聞いてくれている方への感謝祭」と言っていて、近い距離で歌と話を楽しみ、歌以上の魅力も感じられるものでした。

アルバムは9月10日に発売ですが、8月10日から特設web siteで聴くことができるのでチェックしてみてください。

また、パーティーの会場になったmona recordsでは9月1?15日の間コトリンゴcafeになり、コトリンゴプロデュースのランチやスイーツ、クラフト作品の展示、CD販売などふんわりとした世界に染まります。最終日の15日にはワンマンライブも行われるので、まだまだ暑さの続きそうな9月、コトリンゴの作り出すおいしい料理や音楽に癒されに足を運んでみるのはどうでしょう。

アルバム「Sweet Nest」発売記念 特設 web site
「mona records」

  • Author: tuspress

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書評

重松清「半パン・デイズ」

大人になってからの6年間と小学生時代の6年間は、同じ数字なのに、その密度が大きく違ってくる。これからの私達が送る6年間は、いわゆる経験の積み重ねにすぎないのだろうが、彼らの6年間はまさに学びの塊なのであろう。空を [...]

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