特集

オンライン授業の可能性と弊害

本学において、前例のない5月に始まった新学期でオンラインでの授業体制が導入されて以来、すでに4か月が経つ。コロナウィルスによる感染症の拡大を防止し、「三密」を回避するためには、この手段ほど有効なものはないだろう。オンライン授業に限らずリモートワークの実施は、人と物の移動が旺盛な時代だからこそ発生したこの災害に対して、この時代を支える高度な通信技術の力を借りて整備した、いわば時代の問題を解決する、時代の手を利用した解決策であると言える。以下ではこのオンライン授業で変わったと思われる授業の受け方や生活について、一つの視点からの考察を試みる。

コロナ禍で全世界が一斉にリモート授業を導入することになったのは、一つの革命であり、一つの未曾有の実験であると思われる。革命である理由は新たな体制への移行が突然各地でおき始め、取返しがつかないほど進行しているためであり、実験である理由は前例がなく、結果の見通しがないまま授業体制を改革したためである。この実験で今のところ示されたことは、これまで予備校や少数の割合の人が通っていた通信制教育の体制を日本中、世界中の学生の規模に持っていくことで教育は維持されるということだ。この結果は現代の通信技術がどれほど進んでおり、どれほど生活に浸透しているかを確認させられるものである。改めて考えると、人と人がもはや直接顔を合わせずに共に働いたり、教授の顔を一度も見ずに高度な専門的教育を受けたりすることができるのは不思議なことだ。

もう一つ思われるのは、この実験で対人関係も試されているということだ。もともと大学はただ専門の学習をする場所ではなく、他の多数の人と対面して接する社会的な学習をする場所でもあるが、オンライン授業の導入により、大学のこの機能が欠けてしまったと言える。また課外活動も対面で実施できず、学生は家族や地域、アルバイト等の小規模なコミュニティーにのみ属するになったが、これらは大抵固定化されたコミュニティーであることが特徴だ。多くの人が様々な目的を持って対面する大学のような流動性は持たない。置かれた環境が人の気持ちや性格を大きく変化させるのは確かで、現在のこの状況を考えると、オンライン授業を受けている人はより内向的な性格が形成される傾向にあると言えるかも知れない。この時期に頻繁に他人と接することは制限されるので、これは全体の傾向と言えるのだと感じる。

以上の変化は良くも悪くもとらえることができる。リモートワークが普及することは一部で仕事や勉強の効率化に繋がるが、対人関係をより難しいものにするのだろう。少数の人とやひとりで過ごす時間が増えることはある種の可能性を限定する一方、内省する機会が増えることで別の可能性が生まれるのかも知れない。いずれにしろ、この特殊な期間をどう過ごすかが問題であり、自分自身に対してこれを常に問いていきたい。