- 2010-05-19 (水) 1:00
- 書評
大人になってからの6年間と小学生時代の6年間は、同じ数字なのに、その密度が大きく違ってくる。これからの私達が送る6年間は、いわゆる経験の積み重ねにすぎないのだろうが、彼らの6年間はまさに学びの塊なのであろう。空を見ただけで、何か計り知れない感情を抱くこともあるかもしれない。そんなかけがえのない時期に出会った町。主人公の少年は、慣れ親しんだ東京を離れ、言葉も環境も違う町へ転校してきた。
主人公のヒロシが出会う町、そして人。引っ越してきたばかりの東京くさい家族から、次第に土地になじんでいく様子がハートフルに描かれている作品だ。方言を覚えて、友達とケンカして、大切な人と別れて、そして最後には恋だってする。6年間を通してヒロシの周りの人間とともに成長していく主人公の姿に、都会暮らしの人は、羨ましさを感じるのではないだろうか。
「半パン・デイズ」は、重松清氏が描く多くの作品に馴染む作品で、著者のファンであれば絶賛の作品になるはずだ。普段は隠れて見えない人間的な温かさが文字となって、そして頭の中で感情となって浮かびあがる。温かすぎて涙がでてくる。何かを失って流す涙より、心地よい涙。体の中のストレスや毒を全て洗い出す、涙。まさに、心のデトックス。
乾ききった世界に、ヒトシズクの潤いを与える「半パン・デイズ」。主人公のヒロシと一緒に、忘れかけていた大切なモノをもう一度感じてみてはいかがだろうか。
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