- 2009-11-15 (日) 0:38
- 書評
文章を書くことを生業とするフリーライターが描いた、一冊の絵本。楽しそうな題名とは裏腹に、その絵本を持つ人は皆、哀しみを抱えている。自らの栄華を懐かしむ人が、なぜかその絵本に引き込まれる。「希望」という明るい未来を描いているその裏側に、「哀愁」を感じるからなのだろうか。
絵本を描けなくなった絵本作家が、様々な人と出会い、そして別れていく。その誰もが、幸せを過去に任せ、今はただただ哀しく生きている、ような気がした。読んでいる途中、自分が経験したことのない事柄に対して共感する自分に気づいた。
本書の主人公をあげるならば、僕は絵本作家ではなく、各々の物語に登場する人物達を選ぶ。なぜなら、絵本作家は円の中心のようなもので、360℃見渡せるような視点に立ち、様々な人の「幸せと哀しみ」に触れているように感じるからだ。そして、この幸せと哀しみが「哀愁」なのだと、思う。
多角的な視点から描かれる人間描写には、本当に感嘆する。人物の思考、行動、そして文章のリズム。そのすべてが絡み合い、読者の心に流れる。短編小説をあるテーマに沿って書き上げる重松氏の実力には、驚かされるばかりである。
金や愛情という名の幸せと、栄華の裏側にある哀しみが渦巻く町を舞台に描かれた本書には、感じるものも多いはずだ。
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