- 2009-11-03 (火) 0:51
- 書評
歌とは不思議なものだ。楽しいときに聴くよりも、悲しいときに聴く方が心に染みやすい。まるで、傷ついた心に薬を塗るように、人の心を癒してくれる。しかし、歌は完全に悲しみを消し去ってくれるわけではない。むしろ、「ココに傷があるんだぞ」と、わざわざ傷跡を残していく。未来でその時の音楽を聴くと、悲しかったはずなのに、なぜだが甘酸っぱい。そして、ほんの少しだけ、しょっぱい。
アイツが彼女と別れたとき、流行っていたあの歌。受験に失敗したとき、「元気出せよ」とアイツが貸してくれた歌。日々の中で何気なく耳にする優しい音色と、人生の一片を上手く紡ぎ上げ、一つの作品にした「あの歌がきこえる」。
作品には昭和後期の名曲が書き連ねてある。当時青春を過ごした若者は、そろそろ40歳を迎えるころだろうか。社会に慣れ人生の後輩もでき「よし、頑張るぞ」と明日への希望に満ちている、のだろうか。それとも、昨日と変わらない今日をつまらないと感じている、のだろうか・・・。
本書をめくると、そこからは甘酸っぱい話とともに優しい音楽が流れる。自分が経験した話でもない、ましてや自分が聞いたことのある曲でもない、そんな知らないことだらけの物語に、何故だか勇気づけられる。そういった話をいくつもまとめた、長編的短編集だ。
いま聴いている曲が、思い出の曲になるかもしれない。
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