- 2009-08-06 (木) 0:05
- 書評
人の運命とは面白いもので、予期せぬ出来事が起こったりする。過度な事を言ってしまえば毎日がその予期せぬ出来事の連続なのだが、その奇跡的な運命に気づいている人は少ない。歩道橋で何気なくすれ違う人、たまたま立ち寄ったファストフード店の店員、気にも留めないバスの運転手、その誰もが地球上で出会う確率論から見れば奇跡的な運命なのである。彼らは果たして自分の人生に影響を及ぼすのだろうか。わからない。だが、影響を及ぼさないとも言い切れない。ある誰かの存在は自分の人生に一体いかなる影響を及ぼすのか。
物語は複数の運命を同時に展開しながら進んでいく。それぞれの運命にはそれぞれの過酷な人生があり、決して平凡なものではない。絶望や犯罪が事も無げに姿を現す。しかし、彼らは気づいていない。彼らの小さな運命がより大きな運命に絡めとられていることに。
独立した人生をいくつも描く事は難しい。それぞれの物語にはそれぞれの芯があり、それを読者に見失わせないようにしなければならないからだ。しかし、本書の物語はどれもがしっかりと独立していて、きちんとした輪郭を持っており、だからこそラストが衝撃なものとなる。複数の人生観をたった一冊の本で体験できる、伊坂氏の得意とする描き方だ。
最後のまとめ方も伊坂氏らしいものだったが、それでいて色褪せない面白さを含んでいた。過去の出来事を走馬灯のように呼び起こさせ、読者を納得させる。小さな奇跡によって運命を相互的に変えていく人々の物語は、本に肥えた読者をも唸らせる。著者の魅力を十分に盛り込んだ一冊だ。
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